相続登記を受任した際、故人が数十年前に司法書士に依頼して相続登記をしていたはずなのに、故人より前の名義人(祖父母等)の不動産が残っていることが判明する場合がよくあります。
「ちゃんと司法書士に依頼して登記してもらったはずなのに、どうして?」と思われるのは当然のことなのですが、そのときの司法書士のせいとは言い切れない事情もあります。今回は、物件漏れが起こるその理由と、見つかった場合にどうすればいいのかという点について、説明していきます。
どうして物件漏れが起こっていたのか
昔は現在に比べ何でもアナログ(手書き、手入力)の処理だったため、役所のほうで相続登記に必要な評価証明書を発行してもらう際に、課税台帳から写し漏らしていたり、台帳そのものの検索性が低く、別台帳に載っている物件を探しきれなかったり、ということが多かったのです。人力作業にはどうしても限界がありますから、昔の役所の人を責めるのもまた酷な面があります。
現在は役所の課税台帳も登記もデジタル化されているため、人力によるミスは少なくなり、検索性も上がりました。そのため、数十年前は漏らしてしまった・気づかなかったものが、過去に比べれば簡単に見つかるようになりました。とはいえ下記の記事で書いたとおり、100%完璧に漏れをなくすにはまだまだ難しい面があるのも事実ですが……。
漏れてしまっていた不動産を相続登記するためにどうすればいいのか
それでは、実際に漏れてしまっている不動産がある場合、あらためて相続登記をする必要があるわけですが、具体的にどうすればいいのでしょうか。以下の2パターンに分けて説明します。
- 過去の相続登記の書類(遺産分割協議書等)が丸々残っている場合
- 過去の相続登記の書類を紛失している場合
1の場合、まず残っている当時の書類の内容を確認します。昔は「誰々が全ての不動産(または全財産)を相続する」という内容で書類を作っているケースが多いので、その書類一式が丸々残っていれば、それを現在でも相続登記に使うことができます。
2の場合、あらためて全ての相続人(亡くなっている方がいる場合は、さらにその相続人全員)に協力を仰いで書類をもらう必要が出てきます。年月が経っている場合大変な作業になる場合もありますが、まだ連絡がとれる範囲の親戚であれば、がんばって協力してもらい、登記を完了させるべきでしょう。
このようなケースがあるので、昔のものでも最近のものでも、相続登記をしたときや遺産分割をしたときの書類(権利証にかぎらず全ての書類)は、極力大切に保管し、家族間でどこに保管しているか情報共有しておいたほうが安心です。