当地(三次市など県北部)では、「国土調査」が実施されている場所とされていない場所があります。過疎地においては、実施の有無により不動産の場所の特定などに大きな影響があるため、実務に携わる人間、あるいは所有者さんご本人にとっては大きな関心事です。
国土調査とは、平たく言うと「国を挙げて国土をちゃんと調査しましょう」という国土交通省によるプロジェクトのことです。なぜそれをする必要があるかというと、かつて国土について作られた地図や登記などは、明治時代に課税のために急ピッチで作られたものがもとになっており、大きく正確性に欠けていたからです。
国土調査は、昭和26年に国土調査法という法律が公布されて以降、昭和・平成・令和にかけて少しずつ調査(i注)が進行しているのですが、まだまだ道半ばという現状です。
具体的には、所有者、地番及び地目の調査並びに境界及び地積に関する測量を行い、その結果を地図及び簿冊に反映させる「地籍調査」という作業がメインになっていますが、それを含め、以後もざっくりと「国土調査」として便宜上説明します。
国土調査は全体的に、都市の人口が多い地域と過疎地の山間部を後回しにして実施されている印象です。都市部は土地が細分化され構造物も多く、多数の人の利益が絡むので大変であること、山間部は現地の調査が物理的に大変で、近隣住民も現況がわからない場合が多いこと、などが原因です。
それでも都市部は、不動産取引の際に土地家屋調査士さんが測量や境界確定をしていて、その蓄積があるため、国土調査が行われていなくてもあまり不自由することはありません。
しかし過疎地では、不動産取引自体が少なく、あったとしても測量や境界確定をせずに行われることが多いため、国土調査が行われていない地域では、今でも明治時代のままの地図しかない場所がたくさんあるのです。そしてこの地図は、ざっくりとしすぎていて、専門家が見てもどの土地がどの場所に当てはまるのかわからないことが多いのです。そのため、所有者さんにとっても、自分の所有地が具体的にどこかにあるのかわからない、ということが起こりえます。
国交省のWebサイトで国土調査(地籍調査)の実施状況を見ることができるのですが、三次法務局管内の3市における実施状況は、三次市が70%、安芸高田市が69%、庄原市が19%となっています。
国のプロジェクトとはいえ実際には市町村の職員さんが調査を進めるので、このように自治体によってバラつきがあるのです。場所により国土調査の恩恵を受けられるところと、そうでないところがある、というのが当地の現状といえます。