相続登記義務化で相続登記が簡単にできるようになる?

来月から相続登記が義務化されることに伴い、問い合わせも増えてきているのを日々感じるようになってきました。

お客様からの問い合わせのなかで、「相続登記義務化で相続登記が簡単にできるようになるんでしょう?」というお声を聞くことがあるのですが、結論としては「簡単にはなりません」ということになります。相続登記は私人の財産の帰属に関する重大な手続きなので、複数の相続人のうち一人の名義にするために相続関係の証明と相続人全員の協議(または調停等)の証明が必要という現在の取り扱いは、義務化以降も全く変わりません。

おそらく簡単になるという誤解のもとになっているのは、義務化に伴って新しく開始する「相続人申告登記」の存在が原因と思われます。この説明に関して一部のメディアが紛らわしい見出しをつけることもあり、多くの方を誤解させる原因になっているのではないかと思います。

では「相続人申告登記」とはいったい何なのでしょうか。

相続登記義務化に伴い、(場合により)「10万円以下の過料が科される」という決まりができたのですが、どうしても規定の期間内(3年以内)に相続登記ができそうにないということもあるかもしれません。そういう場合に、規定の期間内にとりあえず申告しておけば申告した人は過料の対象にならない、という効果が得られるのが、この「相続人申告登記」です。「相続人申告登記」の申請は、相続人のうち一人のみでできるため相続登記に比べるとずっと簡単です。しかし、相続登記そのものをしたことになるわけではありません(あくまで過料の対象にならないというだけです)

この「相続人申告登記」は司法書士業界からの要請で入ったようですが、おそらく経済的に困窮していて相続登記の費用がすぐに払えない方の救済措置として考えられたものと私は解釈しています。

正しく理解しないまま安易に「相続人申告登記」をしたことで、相続登記が完了したと誤解してそのまま放置してしまったり、他の相続人に誤解を与えて相続人どうしの仲が険悪になってしまっては本末転倒です。利用を検討する際は、何のために本制度を利用するのか、目的を慎重に考える必要があります。私としては、本制度を利用すべきケースはかなり限定的と考えており、私のほうからお客様に説明する際は「それより一刻も早く相続登記(遺産分割協議)に着手するほうがずっと良いです」と答えることが多いです。