相続登記の流れ2 相続人が誰になるかわからない(相続人が多い)ケース

前記事にひきつづいて、相続登記の流れについてのお話です。今回はまだ他の相続人が誰かわからない状態で司法書士(当事務所)に依頼する場合の流れについて説明します。

他の相続人が誰かわからない、というケースは、兄弟姉妹(や甥姪)が関係する相続や、名義人が昔の人のままで複数の相続が発生している場合によくあります。相続人の数が多くなりがちで、また亡くなった順番により相続関係も変わってくるため、戸籍を全部調べてみないと誰が相続人なのかわからないことが多いのです。

では、以下流れについて説明していきます。

新名義人になる意思のある相続人から依頼

他の相続人がまだ誰かわからなくても、「私が話をまとめて相続登記をします」という意思のある相続人の一人から司法書士が依頼を受けて、戸籍等を取得することは認められています。是非気軽にご相談いただければと思います。

戸籍を取得して相続人を確定

【司法書士側】

戸籍をすべて取得し、相続人の全員を確定させます。結婚・移住等で遠方に戸籍を作っている方がいる場合、郵送での戸籍請求になるため、時間がかかる場合があります。

面識がない相続人や所在がわからない相続人がいる場合でも、戸籍の附票という書類を取得することで、現住所を知ることができます。

各相続人にコンタクトをとり、合意をまとめる

【依頼者さま側】

ここで初めて各相続人さまにコンタクトをとっていただくことになるのですが、依頼者さまと各相続人さまとの間で、面識があって電話番号など連絡先を知っているかそうでないかで対応が異なってきます。

面識があって連絡先を知っている場合は、依頼者さまから直接連絡していただいて話をしていただくことになります。

連絡先がわからない場合、前述のとおり戸籍の附票で住所までは調べることができるので、その住所あてにお手紙を送ることになります。お手紙の文案・書面作成は、司法書士がお手伝いいたします。お手紙に対してなにか反応があった場合、依頼者さまより話をしていただくことになります。

依頼者さまから、各相続人に司法書士から全部話をしてもらえないかと要望をいただくことがありますが、当事務所では以下の2つの理由から、依頼者さまから直接話をしてもらうことをお願いしています。

●法律上の代理権の限界

弁護士法により、コンタクトをとってみたものの無視・拒絶等ネガティブな反応をされた場合、これ以上司法書士が交渉することができません。

●代理人ではなくご本人から説明していただいたほうが成功率が高い

現実問題として、専門職の代理人からコンタクトをとると、「何か面倒事に巻き込まれた」と不安になる方や、対応できる自信がなくてとにかく逃避・後回しにしてやりすごす方が、世の中にはけっこう多いのです。それよりも、依頼者さまご本人から心を尽くして説明した場合のほうが、きちんと話を聞いて協力してくれる確率はずっと上がります。

もちろん、連絡を受けた相続人の方が「なぜ私も相続人になるの?」「具体的に何を準備したらいいの」等疑問に思われた場合、司法書士に問い合わせてもらうのは全く問題ありません。

合意がまとまったら、遺産分割協議書(遺産分割協議証明書)を各相続人さまに送付

【司法書士側】

遺産分割協議書を作成し、依頼者さまにお渡しするか、または各相続人さまに送付します。人数が多い場合、1通の遺産分割協議書を全員に回覧するのは現実的に難しいので、各相続人につき1通ずつ「遺産分割協議証明書」を送ることもできます。

【各相続人さま側】

印鑑証明書を役所等で取得し、届いた遺産分割協議書(遺産分割協議証明書)に署名捺印いただきます。

書類が全部揃ったら、速やかに法務局へ登記の申請

【司法書士側】

署名捺印済みの遺産分割協議書と印鑑証明書を預かったら、速やかに法務局へ登記の申請をいたします。もちろん書類の提出や、登記完了後の受け取りも、すべて司法書士側で行います

登記完了後、書類の返却

登記が完了しましたら、お預かりした書類や、新しく発行された権利証(登記識別情報)を依頼者さまへ返却いたします。

当事務所では、登記費用は書類返却時のお支払いで結構です。

まとめ

以上の流れですが、これはあくまで、すんなりいったケースのものになります。相続人の人数が多すぎる場合、他の方法を考慮したほうがいい場合もあります

過去の経験から、面識も伝手もない相続人が複数名いる場合、コンタクトを一切無視してしまう人がいる可能性が高い印象を持っています。その場合、協力してくれる人から先に相続分譲渡の証明書(印鑑証明書付き)をもらったり、家庭裁判所での調停・審判を視野に入れたりしなければならないこともあります。